日本病院会雑誌「銷夏随筆」(2023)に投稿した内容です。ご一読を!

当院は自治体病院であり、2022 年 3 月に総務省から発出された「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」に沿って、今年度中に 2027 年までの中期計画を自治体と共に作成しなければなりません。

もう 1 年以上経っているのに、まだできてないのかよ、と突っ込みが入りそうでお恥ずかしいかぎりです。その関連資料の中に、2025 年以降「高齢者の急増」から「現役世代の急減」に局面が変化するとの指摘がありました。疾病構造や患者数の変化に加えて、医療の支え手・働き手の不足にも留意せよ、と言ってくれていると感じました。

そのような折、河合雅司氏の著作である「未来の年表」シリーズを 3 冊ほど読んでみました。読後感としては、正直暗澹たる気持ちになってしまいました。まず、様々な努力で合計特殊出生率が上昇しても、出生数は増えないそうです。なぜかと言えば、未来の母親となる女児の数が減っているから。なるほど、率が上がっても生んでくださる女性が少なければ、人口は増えず減少していく。氏は人口減少を「静かなる有事」と表現しており、知らず知らずのうちに若手の自衛隊員も減ってしまって、国防に直結する危機が迫るということのようです。「ただの予想でしょ!」と言って笑い飛ばせないのは、人口の将来推計とそれに基づく諸現象の予測は、ほぼ外れないからですよね。

さて、病院として 2027 年前後までの計画を立てる訳ですが、氏の示した年表によると、2024 年には 3 人に 1 人が 65 歳以上の超高齢者大国になるとのことですが、そのような地域は既に多数存在しており、十和田市も 2023 年 3 月で高齢化率 35%となっています。2026 年認知症患者が 700 万人、2027 年輸血用血液が不足、2030 年百貨店・銀行・老人ホームが地方から消える等々予想されています。また、中小企業白書によると、サービス業他の休廃業・解散企業の中では、一般診療所が最も増えているとのことです。そのほとんどが黒字経営での廃業と考えられ、院長先生の高齢化と後継者不足が背景にあるようです。当地域でもここ数年で 11 か所の一般診療所が閉院となり、後継できたのが 3 か所のみで、かかりつけ医機能の維持も大きな課題となっています。現実が投影されていることを、実感します。

氏は、「戦略的に縮む」というスローガンを掲げ、小さくても豊かな国になるための処方箋も提示しています。よりよいものをより安くから、よいものはそれ相応の価格で、に転換し、商品を高付加価値化し少量生産少量販売・厚利少売を提案しています。医療も、そのまま当てはまりそうです。機能分化・連携強化に尽きる訳ですが、それぞれの専門性を磨き上げ、若手医療従事者が減少している現実を受け止め、現有職員にスキルアップしてもらいながら、長く働いていただかなければなりません。中期計画には、どのような病態の患者さんに対応するべきかという視点はありましたが、若手の病院職員の確保・維持についての視点は甘かったと反省しています。人口減少を身近に捉え、EBPM に基づいた病院将来計画を立案しなければならないと尻をひっぱたかれた思いです。

2023 年 7 月 24 日