全国自治体病院協議会雑誌の「新春随想」に投稿した内容です。ご一読ください。
2017 年 4 月から施行された改正医療法の中で、それぞれの地域医療構想の達成と地域包括ケアシステムの構築を進めるための選択肢の一つとして創設された制度が、表題の地域医療連携推進法人になります。すでに目新しい制度ではなくなりましたが、当院(369 床)が中核病院となっている上十三二次医療圏(青森県内 6 医療圏の一つ:2 市 5 町 1 村で構成)で、2021 年 3 月に県初の地域医療連携推進法人「上十三まるごとネット」が設立されて 4 年目となります。その代表理事を務めさせていただいている身でもあることから、これまでの活動を振り返る意味で本誌面を活用させていただきました。ご容赦ください。
そもそもこの制度の起こりは、権丈善一先生著の「ちょっと気になる医療と介護 第 3 版」によれば、2013 年 4 月 19 日第 9 回社会保障制度改革国民会議での先生の報告が発端のようです。そのタイトルは「国民の医療介護ニーズに適合した提供体制改革への道筋~医療は競争よりも協調を」であり、その中に「新型医療法人(たとえば、非営利ホールディングカンパニー)の枠組みの創設」の提案があります。詳細な議論の経過は省略しますが、その後の検討会の中で、少し長めではあるものの「地域医療連携推進法人」の名称に固まっていったようです。「競争よりも協調」の考え方が、具現化されたと感じます。2024 年10 月 1 日時点で 45 法人が認定されており、徐々に増えているようです。その設立理由には共通項も多いと思いますが、45 通りのそれぞれの事情があるのでしょう。
2016 年 3 月に県から示された当医療圏の地域医療構想では、主に人口減少(2024 年 1 月時点で約 16 万 3 千人)を背景に圏域全体の急性期病床の過剰と回復期病床の不足が指摘されていました。これを受け、当院が音頭を取って当圏域の自治体病院間での話し合いが数回行われました。これにより各病院の考え方や問題点等を共有したこともあり、単独での対応には限界があるとの共通認識が醸成されたと感じています。加えて「医療機能分化と連携を考える会」と称した講演会も 2 回行われ、この中で地域医療連携推進法人の話題を意識的に取り上げていた背景もありました。そのような下地もあって、三沢市立三沢病院(220 床)との間で具体的な法人立ち上げの話が現実化したと思います。人口減少・超高齢化が進む中で、如何にして病院を存続させながら、地域医療を維持し守っていくのか、という極めて強い危機感の共有というものが、法人立ち上げの原動力になったと考えています。この法人化を連携以上、統合未満と表現することもありますが、まずは両病院でこの地域の医療の BCP(業務継続計画)を作って行こうということになりました。参加施設が重要事項を決定する場合には、法人の中で意見を述べ合うことができるとされており、透明度の高い議論や数値の見える化等による経営レベルでの連携も可能となり、それが大きなメリットになると考えられました。
発足して 2 年は、コロナ禍もあり、やりたかった人財交流等が思うように進みませんでしたが、逆にコロナ対応については、より密に連携できたプラスの面もありました。その後、当法人の趣旨をご理解いただき、2023 年 5 月からは七戸町にある公立七戸病院(110 床)が加わり、2024 年 4 月からは取り組みの目玉でもある人財交流が開始されました。さらに同年 5 月からは野辺地町にある公立野辺地病院(151 床)が加わり、当圏域の入院機能を持つ自治体病院がすべて参加する法人となりました。この時点での病床数を合わせると約 800 床となり、上十三地域全体の病床数のほぼ半分を占めることになりました。同年 10月からは、東北町の医療法人社団良風会ちびき病院(110 床)の参加があり、初の民間病院であることが大きな刺激となっています。
今後の人口減少は必然ですので、ある有識者の方が指摘しているように、いかにして「戦略的に縮むか」が重要です。そのためには圏域全体での機能分化・連携強化に尽きると思います。まずダウンサイズですが、七戸がすでに 40 床減、そして十和田が 46 床減、三沢が 22 床減の予定であり、今後は如何に機能分化していくかという総合的な判断が必要になります。管理部門では、月に 1 回ウェブ会議を行っており、情報共有をしながら議論を重ねています。事務局においても、薬品・医療材料の共同購入のすり合わせが行われており、その成果を地域フォーミュラリーまで繋げようとしています。加えて、地域全体での病院経営の黒字化も視野に入れて動き始めています。
また、先日臨時社員総会を開催し、定款の中に人財の活用・確保も含めた「育成」の文言を追加しました。医療人財の確保が今後さらに難しくなる状況を踏まえ、法人として医療人財を積極的に育成していくというミッションも担うこととしました。実際、法人内での看護局同士の活動もあり、共通の新人・中堅看護師の育成プログラムの作成を進めようとしています。
総論的な話題に終始してしまいましたが、少しずつ前には進んでいるものの、まだまだスピード感が足りません。我が国のトップランナーである「日本海ヘルケアネット」様の背中は遥か彼方ですが、地道な活動を継続したいと思います。
2025 年 1 月 6 日