日本病院会雑誌の銷夏随筆 2025 に投稿した内容です。ご一読ください。

病院経営が火の車である。暗い書き出しになってしまうが、事実なので如何ともし難い。
「病院経営非常事態宣言」と称した内容を 10 枚のスライドにまとめて、院内部署 19 か所を回り、10 分程度で現場職員に直接訴えた。約 250 名の職員が、対面で聴いてくれた。タイトルを緊急事態とするか、非常事態とするか迷ったが、危機が差し迫っている状況(緊急)でもあり、平常時とは異なる事態(非常・有事)でもあるのだが、コロナ禍でも使われた聞きなれた緊急ではなく、非常事態を選択した。

主な内容は、過去 10 年間の純損益の推移を示し、2年前までは累積で黒字を計上していたが、2023 年度の赤字でその分が吹っ飛び、2024 年度の赤字で奈落の底へ。数値の記載はご勘弁を。続いて、赤字転落の要因を内部(基盤診療科医師の不在等)と外部(賃金・物価の上昇等)に分けて分析し、基本的には内部要因の改善で乗り切るしかないことを要請し、日本病院会を含む 6 病院団体が提示した「このままではある日突然、病院がなくなります」のスライドを借用し、危機感を共有した。

当院は自治体病院なので、首長との情報共有が欠かせない。実は 4 期 16 年にわたりお世話になった前市長が勇退され、2025 年 1 月に十和田市長選挙が行われた。その結果、次点との差が 296 票という激戦を制し、青森県内 10 市の中で、ここ十和田市に県内初めての女性市長が誕生した。新市長は、市議会議員で副議長も務めていたので、市立病院の運営についてはある程度理解していたと思う。これまで病院運営を後押ししてくれていた前市長の後継ということもあり、当院としてはありがたい結果となったのだが、市長に就任した最初の3 月議会で、決算状況を踏まえた上での病院次年度予算案が審議され、病院事業の行く末が危ぶまれるような収支状況を深く知ることになった。

新市長としては公約の一つである子供子育て支援に力を入れたいところだったが、まずは喫緊の課題が病院事業の安定という大問題を突き付けてしまうことになった。そのような厳しい船出の中、新市長は大変前向きでかつ謙虚であり、「病院のためには何でもやる」と自ら申し出てくれた。実際、前記の現場回りでは、19 部署中 12 部署に同行してくれて、病院経営への協力を共に訴えてくれた。病院経営が危機的状況であることの現場への浸透力が、一気に増したと感じている。また、各診療科の代表医師との面談にも同席してくれて、直接医師の考えや要望を聞いてくれた。感謝の一言であり、病院一丸となった経営改善の機運醸成に大きく関わってもらった。

自治体本体の維持のためには当院の経営改善は必須であり、今年度が勝負と考えている。人財は整ってきている。前向きな一体感が最も重要であろう。決して甘くはないが、病院経営が安定し、子供子育て支援をサポートできるような事業収支になれば、新市長への最高の恩返しになるのだが。

2025 年 6 月 27 日