令和7年7月31日(木)、8 月 1日(金)の2日間、十和田湖畔のホテル十和田荘において、総勢 115 名の皆さんにご参加いただき、標記の会議が開催されました。全国を7ブロックに分けて、旬のテーマについて議論する会議であり、東北ブロックは6県持ち回りで運営しています。今回は青森県支部担当ということで、私がたまたま支部長を仰せつかっていたこともあり、当院が務めることになったわけです。
当院事務局が中心となり、看護局のサポートもいただいて、前日発生したカムチャツカ半島付近の地震による津波の影響で、出席予定であった青森県知事宮下宗一郎氏代理の健康医療福祉部部長の守川義信氏が、その対策のために欠席とはなりましたが、それ以外は滞りなく開催できたことをまずはご報告いたします。また、会の締めの挨拶を櫻田百合子十和田市長に行っていただいたことを申し添えておきます。
このような比較的大きなイベントをしっかり遂行することは、当院の総合力、組織文化(雰囲気)を示すことにもなり、胸を張れる結果であったと思います。平日の診療を守っていただいた皆さんを含め、ご協力いただいた全職員に、心より感謝いたします。ありがとうございました。
会議の内容について、簡単にご報告いたします。
初日は、総務省、厚生労働省、協議会本部からのご講演をいただきました。
総務省からは、「公立病院の現状と課題等について」と題した講演で、東北地方は公立病院の病床数の割合が高いこと(全国1位山形県 42.7%、2 位岩手県 41.6%、3 位青森県 37.3%)、公立病院全体の令和 5 年度決算で過去最大の経常収支赤字を記録し令和 6 年度はさらに厳しいこと、病院事業に係る地方交付税措置が少し増えること等が話されました。
厚生労働省からは、「地域医療の医師偏在について」と題した講演で、医師の需要推計では年間 960 時間程度の労働時間と仮定すると2029 年頃に均衡すること、東北地方の医師偏在指標は宮城県を除いて他の 5 県で極めて低いこと、診療科偏在も含めて是正に努めているがなかなか難しいこと等が話されました。
協議会本部からは、副会長である島根県立中央病院病院長の小阪真二先生から「島根県立中央病院における広報活性化の歩み」と題した講演で、人がそのサービスを買うという行動を起こすのはその「名」を知っていることがすべての原点であること、活字媒体は手に取りやすいやわらかい内容にすること(自院が病院広報アワード受賞)、映像媒体(デジタルサイネージ等)をフル活用、地域とのコラボレーション(高校、大学、コミュニティ等)が重要、広報を楽しむチームの存在等、当院でも応用可能な内容でした。
2 日目は、旬のテーマについての議論を深める充実した時間となりました。毎年、全国共通議題が 1 題協議会本部から発出され、それを深掘りするように東北 6 県各県からの提出議題もあり、計7議案についての議論が展開されました。
私自身、各病院からの回答をすべて読ませていただきましたが、「医療一揆」が起きそうな悲鳴、慟哭が文面から聞こえてきて、現場の頑張りも限界であるとの強い思いが表現されていました。
共通議題は、「働き方改革への対応~医療の質の維持と健全な病院経営のために~」となっており、かなり幅広い議論がなされました。若手医師に対する経験症例数の確保や教育の充実については、各病院共に業務と自己研鑽の切り分けについて明文化しながら取り組んでおり、大きな問題はないようでした。ただ、国民への周知不足、将来の医療の質低下への懸念や一部の病院の大学派遣医減少といった切実な訴えもありました。運用面の課題については、勤怠管理システムと自己申告の突合せで運用している病院がほとんどで、時間外勤務の多い医師へのタイムリーな面接指導ができないとの悩みがありました。セル看護方式を導入している病院は多くはありませんでしたが、メリットとともにデメリットもあるとの報告がなされました。
次に、各県提出議題について簡単に記します。
青森県からは「収支改善にかかる取り組みについて」が出され、日本ホスピタルアライアンスでの共同購入、院外倉庫型業者委託、一括調達方式、高額医療機器のフルメンテナンスの見直し、LED 化、新電力の導入等様々な取り組みが共有されました。宮城県からは「DPC収益確保に向けた取り組みについて」が出され、主に全国の平均在院日数である期間Ⅱの捉え方について議論されました。当院としては、病床利用率の観点からも、期間Ⅱ最終日までの入院を勧めていることを述べました。この点については、診療報酬改定を見定めながら柔軟に対応していく必要がありそうです。
岩手県からは「各病院におけるデジタル化の推進状況について」が出され、その必要性は十分理解しているものの、赤字の状況ではその投資に踏み切れず、他院の実績を注視している病院が多いようでした。そのような状況の中、RPA の活用で勤務時間を削減している病院、AI 診断(胸部写真、内視鏡、CT)を導入している病院がありました。デジタル人材については、新たに雇用する余裕はなく、自院で育てようとしている病院が大半でした。
山形県からは「医師偏在の問題について」が出され、病院単独では限界があり、県の介入が必須であるとの意見が多くを占めました。青森県の現状を青森県立中央病院の廣田和美院長が報告してくれましたが、令和 6 年 1 月に青森県・弘前大学・青森県立中央病院で締結した医師派遣事業のことやオンライン診療の活用等の内容でした。
秋田県からは「医療人材(看護師等)の確保について」が出され、特に看護師不足についてはすべての病院に共通する悩みでした。求人公開の前倒し、人材派遣会社の活用、中高生への勧誘、SNS の活用、奨学金等、様々な対策をやってはいるものの、改善が難しいようでした。当院の坪看護局長からは、地域医療連携推進法人内での看護師の教育・育成・活用についての話題提供をしてもらいました。
福島県からは「令和 8 年度診療報酬改定に対する要望などについて」が出され、ほぼすべての病院が赤字に喘ぐ中、ドストライクな議題であり、とにかく診療報酬を上げるべしとの総意でありました。具体的には、まずは入院基本料のアップ、各種加算要件の緩和(特に人材配置要件)、物価スライド制の導入、ベースアップ評価料の増点と導入そのものの診療報酬体系との違和感、デジタル化への手厚い加算、住民も関わる診療報酬制度の導入等、幅広い要望がありました。
最後に、全国自治体病院協議会会長の望月泉先生の総括があり、共通議題に関しては、初期研修医・専攻医は労働者ではあるが学習者としての一面もあるため医師としての質の維持への配慮が重要であること、働き方改革が働かない改革になることを危惧していると指摘していました。
また、各県提出議題については、現場の厳しい状況は理解しており、いわゆる骨太の方針 2025 において、社会保障関連費については高齢化による伸びに経済・物価動向を踏まえた増加分を加算するという文言が加えられたことを重視しており、しっかり診療報酬引き上げに繋げたいとの決意を述べていました。
私は冒頭の挨拶で、「一般企業であれば人口減少地域から逃げ出せば言いわけですが、我々は最後まで地域を守る殿にならなければなりません。死に絶える訳には参りませんので、知恵を出し合いながら、変化しながら、歯を食いしばって生き残らなければなりません。今回、時間をしっかり取れる合宿形式にした甲斐があるかもしれませんし、その良さを十分に発揮できるかもと勝手に思っております。本日は見識を深め、その後に大いに飲んで懇親を深め、明日は議論を深めていただいて、有意義な十和田合宿にしていただきたいと思います。」と述べました
.....が、皆さんのご協力で会としてはそこそこうまくいったように思っています。しかしながら、自らを振り返ると診療報酬改定は来年度であり、我々の勝負は今年度です。もちろん、活用できる共有情報を即実践しながら、この有意義であった十和田合宿を今後に活かしたいと思っています。今年度 4 カ月が経過し、全職員の一体感が醸成されてきていると感じます。高い目標を掲げて、地域のために前向きに努力している結果が出つつあります。私自身、気合を入れなおすきっかけにしたいと思った会合でした。
2025 年 8 月 11 日