平成 28 年度の「みずうみ冬号」に書いた編集後記です。
フーテンの寅さんの常套句である。世の中何か変な方向に流れているように感じるのは、私だけではないようだ。トランプ現象に代表されるように、外向きから内向きへ、排他的保護主義へ、理性から感情へ、タテマエからホンネへ、と様々な表現で評論家諸氏が警鐘を鳴らしている。「それを言っちゃあ おしまいよ!」が横行している感がある。
感情に任せてホンネをぶちまけることが、かえって誠実であると受け取られ、市民受けする状況である。でも程度問題だよな。やはり、一定のルールというものがあるし、暗黙の了解という状況もあるわけで、何でもかんでも口に出していいはずがない。摩擦が増えるだけのような気がするし、ここはバランス感覚が重要ではないだろうか。
医療界に目を向けると、病院の統合・再編・集約化だ、医療の質の向上と効率性だと、ここも激動期ではあるが、バランス感覚は保たれていると感じている。医療の本質はホメオスタシス・恒常性の維持であると思うし、医療従事者は日々の仕事からこの感覚を会得しているはずである。医療界はこのバランス感覚に優れた人材の宝庫なのであるから、今後の世の中の「恒常性の要」になると思いたい。こんな医療界に対して、彼の寅さんならば表題の科白は飲み込んで、「それが愛っていうもんよ」とか言ってくれるだろう。医療の世界に身を置いていてまだ良かった、とややマシな気分でいる自分がいる。今年度もお世話になりました。おしまい。