「みずうみ夏号」の巻頭言です。前もってアップします。ご一読ください。
このワクチンは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを終息させる「切り札」と言われています。通常、ワクチン開発には 10 年を要すると言われていましたが、それをわずか数か月で成し遂げたことは、医学史上のマイルストーンとして記録されることでしょう。よく 100 年前のスペイン風邪が例に出されますが、比較すること自体に無理があると十分承知しつつも、医学の進歩を如実に感じてしまいます。
現在、主に接種されているワクチンは、ファイザー社製のmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンです。従来とは異なり、ウイルス表面にあるとげとげ蛋白(スパイク蛋白)の設計図(mRNA)をすぐ壊れないように、ポリエチレングリコールで安定化した脂質ナノ粒子に包み込んで、ヒトの細胞内まで送り込み、その細胞にスパイク蛋白を作ってもらい、ウイルス防御のための免疫能を獲得するという画期的なワクチンです。遺伝子操作、ナノテクノロジー、ドラッグデリバリーシステム等の最先端技術が創り出してくれた「宝物」のように感じます。このアイデアを発案した研究者は、間違いなくノーベル賞候補でしょう。
さて、十和田市内でのワクチン接種ですが、かなり順調に進んでいると思います。医療従事者の皆さんへの 2 回目接種が 6 月中に終了、65 歳以上の市民の皆さんへの 2 回目接種が 7 月中に終了見込み、64 歳以下の市民の皆さんへの 2回目接種が 10 月中に終了見込みとのことです。このミッション遂行にあたっては、行政・医師会の先生方・当院等が連携良く協力し合えていることが、推進力になっていると思います。日頃からの腹の見える関係づくりが、少なからず奏功しているのではないでしょうか。また、私は十和田市民の皆さんのコロナに対する意識の高さも、後押ししてくれていると考えています。昨年 4 月、当市において県内初のクラスターが発生はしましたが、その後 1 年以上にわたり、市内でのクラスター発生の報告はありません。これは、市民の皆さん一人ひとりの感染予防対策の賜物であると思います。
この状況が、コロナ感染症に対する医療提供体制の逼迫を招くことなく、ワクチン接種に医療従事者のマンパワーをつぎ込めている現状に繋がっていることは、厳然たる事実です。このまま、予定通りにワクチン接種が進んで欲しいものです。
忘れかけている日常を取り戻せる日まで、あと数か月の我慢でしょうか。ワクチンの効果を信じるしかありませんが、その確率は高いと思います。忘年会でお会いしましょう。
(2021 年 7 月 7 日)