新しく当院の仲間になってくれた皆さん、大歓迎いたします。末永くよろしくお願いいたします。働き方改革が叫ばれている中、その能力を十二分に発揮していただけるように、職場環境を整えてまいります。
例年であれば 5 月に、新人の皆さんを歓迎し、院内院外にお披露目する会である恒例の「さわらびパーティー」を開催するのですが、今年度も新型コロナの影響で難しいかもしれません。その会の挨拶でいつも触れさせてもらうのが、「さわらび」という言の葉の語源についてです。この言葉は、もちろん当院のシンボルである佐藤忠良さん作の「さわらびの像」から取ったものですが、実は万葉集の歌にまで繋がっているのです。と言うか、万葉集に初出の言葉のようであり、それが志貴皇子(しきのみこ)の詠んだ「いわばしる たるみのうえの さわらびの もえいづるはるに なりにけるかも」という歌なのです。
その意味は「岩をほとばしりながら流れ落ちる滝のほとりに、蕨の新芽が芽吹く春になったんだな~」と、春到来を素直に喜ぶ名歌とされています。実は、あの司馬遼太郎さんの「学生時代の私の読書」というエッセイの中に、戦争に召集された軍服時代 2 年間のあいだに、岩波文庫の「万葉集」を繰り返し読んだと記されてあり、約 4500 首の中から唯一この歌が取り上げられています。その感想を「この原初のあかるさをうたいあげたみごとなリズムは、死に直面したその時期に、心をつねに拭きとる役目をしてくれました。」と表現されています。生命の息吹というものは、どのような状況においても最強のあかるさを提供してくれる存在である、ということなのでしょう。新人の皆さんは「さわらび」そのものであり、まさに病院全体に生まれいずるあかるさ・よろこびを感じさせてくれているとしみじみ思います。
さて、大変いい機会ですので、当院の今後の方向性について伝えておきたいと思います。地域医療構想の基本は、二次医療圏内の中核的医療を担う基幹病院に急性期医療を集約し、そのための人財も集中させて、周辺の連携病院にその人財を派遣しつつ機能分化し、地域完結型医療を構築することにあると思います。上十三地域においては、当院がその基幹病院としての役割を果たさなければなりません。そのためには、さらに柔軟で適応力の高い病院に進化して行く必要があります。現在まで、患者さんの状態に応じて柔軟に色を変えて対応できる、愛称「カメレオン病院」でやってきました。具体的には、急性期・回復期・慢性期・在宅とすべての機能に対応し、断らない・断れない医療を展開してきました。その精神は全く変わらない訳ですが、今後は病院機能全体を急性期寄りにシフトして行かなければならないと考えています。そして、より高度な急性期疾患にも対応できる、「ニューカメレオン病院」となるために、全職員でスキルアップしていく必要があります。さらなる人財の確保と共に、回復期・慢性期機能を有する連携病院への、より明確な移譲の推進も必須となるでしょう。在宅に関しては、十和田市における附属とわだ診療所の存在意義は大変大きく、しっかり維持していかなければなりません。是非とも全職員で当院のあるべき姿をイメージし、共有していただきたいと思います。
新しく加わってくれた「さわらび」の皆さんがもたらす原初のあかるさで、当院の隅々を照らしてもらいながら、すべての業務を見直す機会に繋げて行きましょう。急性期の何でも屋とでも言うべき「ニューカメレオン病院」にバージョンアップしていくことが、当院の存在価値でありかつ生き残り戦略であると確信しています。医療人として、日々省察しながら、自己研鑽を継続し、謙虚に前進して行きたいものです。今年度もよろしくお願いいたします。
2022 年 4 月 18 日