全国自治体病院協議会雑誌の「新春随想」に投稿した内容です。ご一読ください。今年もよろしく。
令和 4 年 3 月 29 日に総務省から「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」が発出され、当院もそれに沿った令和 9年度までのプランを十和田市と共に作成中です。大変長いタイトルだなと思いましたが、前回までの「改革」から「経営強化」に変わり、持続可能という文言も加わり、より現実的な感じを受けました。一方で、財務省や都道府県の関与が強まり、現場の医療が歪められるようなことがないように、それぞれの地域からの発信も重要であろうとの思いも強くしました。
さて、ガイドラインに沿った中長期プランを立て、その実現に向けた年度目標を作成し、それを全職員に明示し、病院運営に取り組む訳ですが、なかなか周知徹底が難しいという現実があります。これまでもそのような形でやってきたつもりですが、管理部門の思いが上滑りしているような、私自身も目標を示したことで満足してしまっていたような、何かもやもやした感覚がありました。
そのような時に、偶然ネット上で「医療機関の組織開発」というセミナーが開かれることを知り、無料ということもあり聴講してみました。「組織」も「開発」もありふれた言葉ですが、「組織開発」と繋がるとあまり聞いたことがなく、興味を持ったのが聴講の大きな理由でした。以下は、そのセミナー受講とその後読んだ「組織開発の探求」という本を参考にした、私なりの素人の解釈ですのでご承知おきください。
組織開発という言葉が誕生して約 60 年、哲学・心理学・経営学も背景にある手法であるためか、時代の状況により栄枯盛衰を繰り返しているようです。ただ、ここに来てダイバーシティ(多様性)が叫ばれ、働き方改革の推進が叫ばれ、同時に労働人口が減っていくという時代の中で、再び注目されてきているようです。組織開発には、さまざまな定義(一説には 32 通り)があるようですが、「組織(チーム)を円滑に機能させるための意図的な働きかけ(介入)」と考えていいようです。現在進行中の働き方改革のかけ声のもと行われる職場ぐるみの生産性向上の取り組みには、マッチする考え方かなと思います。
ただ人を集めてもバラバラでなかなか組織(チーム)としてまとまりを持つことができず、パワーを発揮できないことがあります。そこに「組織開発」という手法で、再組織化・秩序化をしていくと、多様性という遠心力によって分散してしまいがちな組織メンバーの諸力を集中させて、有効に機能させていくための求心力に変えられると言うのです。結果として、多様な人々が参加しつつも、高い生産性を誇る職場に生まれ変わることができるという訳です。そういう点では病院という組織は、各診療科や各部署が専門性の高いそれぞれの職域に特化した仕事を行っているので、組織開発との相性は良いとのことです。また、個人個人を管理しようとすると極めて困難ですが、組織(チーム)という集団単位で管理することは比較的容易である、との指摘は腑に落ちました。
一方で、組織の成長を考えると、個人の成長を促す必要があり、そのバランスが重要となります。組織規模が大きくなるほど、様々な難易度が上がるため、300 名以上の職員を抱える組織においては、チーム単位での組織開発が定番となっているようです。当院も正職員が約 400 名、会計年度任用職員と委託職員を加えると 800 名を超える病院組織体ですので、まさに定番サイズです。
また、病院目標を立て、全職員に示し、それを実行するための戦略を考える訳ですが、そこには外部環境の変化と組織の内部事情が影響してきます。目標達成のためには、そのバランスも重要となります。病院は 2 年に1度の診療報酬改定という外部環境の変化には病院一丸となって対応する訳ですが、それ以外の変革は不得手であると言われています。一般的にも、組織は変わりにくいもので変革しにくいものと考えられていて、特に病院は変化を嫌う組織とのことです。確かに、診療科の壁や職種の壁はかなり取り除かれつつあるものの、まだ存在しているとの実感はあります。そして、内部事情とも言える組織文化(空気感のようなもの)も大変重要であると言われています。今のままで問題ないし、面倒くさいし、ややこじつけて患者さんのためになっているし等々、変化を嫌う現場の雰囲気のことです。確かにこれでは、実行可能なことだけをやって、こぢんまりとまとまってしまい、大きな変革はできないと思います。個人が自主的に動き、成長し、それが組織の成長にもなるような病院を目指したいものです。
当院は、二次医療圏の中核病院ですが、病床規模が 369 床とやや中途半端であることから、急性期への機能分化と何でも屋とのバランスを取る必要があります。難しいマネジメントが要求されていると感じますが、組織開発の手法はその一助になると思いました。個人ではなくチームとして管理するという視点や組織文化の重要性については、視野が広がりました。問題を見える化し、ガチな対話をし、振り返り(省察)、フィードバックするというステップは組織開発の基本のようです。今年は、その手法を地道に繰り返しながら前進できればと思っています。
2023 年 1 月 4 日