全国自治体病院協議会雑誌に投稿した内容です。

2025 年 7 月末日をもって、人口約 5 万 7000 人の我が十和田市で、分娩を取り扱う施設がゼロになった。当然市民に不安が拡がり、2025 年1月に青森県内初の女性市長となった新十和田市長も対応に苦慮されている。

当院は、青森県内に 6 つある二次医療圏の一つ上十三圏域の中核病院ではあるが、医師不足のためもあり、10年以上分娩が再開できていない。諸々の努力を微力ながら続けてきたが、外部環境の変化もあり、さらに難しくなっていると感じる。市内には、分娩を取り扱う診療所が2か所あったが、昨年1か所が、そして最後まで踏ん張ってくれていた最後の 1 か所が分娩休止となった。人材不足を背景に、経営的な点も考慮されたのであろう。これで、人口 16 万人弱の上十三二次医療圏の中で、分娩が取り扱われている施設は、三沢市立三沢病院 1 か所となった。同院は常勤医 2 名体制で、応援医師のサポートを九州からもいただいているようであるが、運営は大変厳しいとのことである。

さて、「均霑化」という言葉を初めて聞いたのが、20 年ほど前の「がん診療の均霑化」という表現であったと思う。均霑化とは、「生物が等しく雨露の恵みにうるおうように」との意味から、医療資源(具体的には医師や看護師、医療設備、専門的な治療技術など)を地域間でバランスよく配置し、どこに住んでいても一定水準の医療が受けられるようにすることを意味している。均霑化が必要とされる理由として、第一に「医療へのアクセスの公平性」が挙げられている。がん医療や周産期医療なども、地域に密着した形で提供されることが理想である。もし医療資源が偏在すれば、ある地域では受診までの時間が長くなったり、適切な治療が遅れたりする可能性が高くなる。第二に「健康格差の縮小」である。地域によって受けられる医療のレベルが異なると、結果として地域間の疾患率や死亡率にも差が生じてしまう。均霑化は、こうした不平等を是正し、国民の健康の底上げを図る施策と言える。実は、2008 年に「東北がんネットワーク」という組織が設立されたが、その趣旨が「地域格差のないがん医療を提供する」ということであった。まさにキイワードが「均霑化」であり、現在も継続的に活動している。

私もがん相談の部門で関わらせていただいているが、最近「集約化」というキイワードが加わってきた。その「集約化」だが、専門性の高い医療や高度な治療を、一部の拠点病院に集中させる考え方である。特にがん治療、周産期医療、救急医療、高度な外科手術などは、一定以上の症例数を経験することで医療の質が向上するというエビデンスがある。言い換えれば、すべての医療機関が高度医療を行うのではなく、選ばれた医療機関で集中的に行うほうが、治療成績が良くなる場合が多いということになる。さらに、医療技術の高度化に伴い、高額な医療機器や専門チームを複数の病院で重複して整備することは非効率的である。集約化は、限られた資源を合理的に活用し、質の高い医療を確保するための戦略でもある。また、医師の働き方改革の観点からも、24時間 365 日の対応が必要な救急や周産期医療をすべての病院で行うことは現実的ではない。専門的な機能を担う病院を絞り、適切に役割分担を行うことで、医療者の負担を軽減し、持続可能な医療体制を構築することが可能となる。一部、チャットGPT を使ってみたが、あまりに官僚的文章であると感じたものの採用してしまいました。

均霑化と集約化は、相反する概念と考えてしまうが、「安全で公平な医療提供」を実現するためには車の両輪と捉えて、うまくバランスを取ることが重要であろう。周産期医療はその典型例であり、地域での基本的な妊婦健診や分娩体制を均霑化しつつ、ハイリスク分娩や新生児集中治療を集約化することで、母子の安全を守る仕組みの構築に繋がることになる。それは百も承知だが、相当難易度は高いと思う。医師を含めたスタッフ不足、少子化、里帰り出産を含めた市民の意向やそれを踏まえた自治体の対応等が複雑に絡んでくる。当院としてできることは、まずはスタッフ不足の解消であるが、ハードルは高い。やはり、県や国の責任において、全国それぞれの二次医療圏における医療の均霑化と集約化の落としどころを示すべきであると思う。新たな地域医療構想の中身に、僅かながら期待している。